ナルル王国&ククリア王国のプレイ日記・創作のためのブログです♪
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WN文字書き交流会 『ひとすじの風』
twitterでとても素敵な企画を行っていたので、参加…といいますか、お題を勝手にお借りして、文章を書かせていただいちゃいました。
主催者様、ご快諾いただきありがとうございます。
この場を借りて、感謝申し上げます!


【WN文字書き交流会:お題】

共通テーマ『水遊び』
シチュエーション「手をつなぐ」
書き出し「いつもどおりの一日だった」
台詞「そうは言っても、どうしようもない」

アイテム「鏡」

つたない文章ではあり、お題もうまく使えているかわかりませんが、よろしければご覧ください。






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その日は特に何も変わらない、いつもどおりの一日だった。
いや、もしかしたら昨日よりは少し暑かったかもしれない。


「あつ…」


今日も朝から太陽が全力を出していた。
花壇のナツビに水を上げるマルグレーテの肌はごくわずかな時間でもじっとりと濡れ、夏の暑さを物語っていた。


「もうすぐ収穫かな?そしたら、揚漬ナツビとか、あ、リゼル・コモモを使って、極上ナルレもいいかも。」


自分の育てたナツビの出来に満足しながら、残りの水を家の周りに巻き、ドアの向こうへ戻っていった。


今年の夏は、例年にない猛暑だった。
連日最高気温を更新する日々が続き、ロークの畑仕事へ行く足も遠ざかる程だ。


シーラだったら、まだ涼しいのかしら?
そうシーラの友人に呟くと、シーラルのが暑いんだから、と怒られた。
確かに、ロークの畑は万年雪が残る嘆きの崖の麓にある。だから、涼しいでしょ?と言われることは多いけど…


それでも今年の暑さは異常よ。


さすがのマルグレーテもそう悪態をついた。


家に入ると、奥の寝室でジョナサンと子どもたちが寝息を立てていた。
子どもたちは髪がぺたんこになるほど汗をかき、寝苦しそうにしていた。


だから、離れて寝ればいいのに。
昨晩もそのように勧めたのに、二人の娘たちはこぞって父ちゃの隣を取り合っていたのだった。


一番、寝苦しいのは、父ちゃかも。
そう思うと、自然と笑いがこみ上げてきた。


起こさないようにそっと3人の汗を拭うと、マルグレーテは静かにキッチンへ戻った。


さぁ、ここからは戦場だ。
マルグレーテは桶に水を汲み、クリスタに火を付けた。
時折、額の汗を拭いながら、手早く朝食を準備した。


作ったものをテーブルに並べると、3人を起こした。
思い思いに起きてくる3人。


「ほら。先に顔を洗っていらっしゃい?」


はーい、と不満そうな声を上げながら、パタパタと足音を立てながら、洗面台に向かって行った。


「おはよう」
「おはようー!!」

「はい、おはようございます」


身支度を整えた3人が定位置に座ると、冷たいいむ茶を入れて、私も席についた。


いただきます!の掛け声ののち、娘たちは勢いよく焼きたてのロツパンに手を伸ばし、不器用な手付きでジャムを塗っていく。
ジョナサンはいむ茶を飲みながら、器用にロツパンに様々な野菜を挟み、がぶりとかぶりつく。


何も変わらない、朝の光景だった。


その日は学校も試合もなかったため、食後の片付けを終えると、娘たちに引っ張られるように光の川辺に向かった。


早く!早く!
暑い!暑いよ!


と小さな手でぎゅっと私の手をつなぎながら走るので、着いた頃には汗だくだった。


到着すると、娘たちは思い思いに水着に着替え、浅瀬を優雅に泳ぎだした。


上手いものね。


マルグレーテは感心した。
最近、子どもたちの成長は著しく、いつもその姿に驚かされていた。


昼の刻に差し掛かろうとする川辺には、太陽から放たれる熱が直接降り注ぎ、マルグレーテにも容赦無く降りかかった。
さすがのマルグレーテも耐え切れず、靴紐を丁寧に解き、ちゃぷんと水に足を滑り込ませた。
水が循環しているおかげか、太陽に熱されているにも関わらず、水は程よく冷たかった。


時折、程よい風がマルグレーテの髪の中を駆け抜けたが、やはり黒髪。熱がこもることだけは避けられなかった。


やっぱり、ティルグ帽子、持ってくるべきだったかしら…
そんな風に考えながら、少し湿り気のある髪をくるりと巻き上げた。


「あれー。母ちゃ、髪短い!」
「本当だぁ。短いね!」


水から上がってきた娘たちが口々にそう言った。


「暑いから、まとめちゃったのよ。どう?短いのも似合うかしら?」


水に濡れた娘たちの体を拭きながら、聞いてみた。
娘たちはしばらく考え込んだあと、長い方がいい。とだけ言った。


短いの、似合わない?と聞くと、


あのね!


“父ちゃが、母ちゃは長い方がいい!って言ってたから”


との答えが帰ってきた。




その晩、2人を寝かせたあと、試合観戦を終えたジョナサンが帰ってきた。


彼は被っていた帽子を壁にかけ、椅子に腰掛けた。
少し飲んだらしく、顔が少し赤くなっていた。


「あのね…」


マルグレーテは、昼間あった事をジョナサンに話して聞かせた。


「あなたは、私の長い髪が好きなのですか?」


はっ!?と、普段は動揺しない彼の表情が変わった。


顔、赤くなってますよ?
これは、お酒のせいだ。


冷静さを取り戻そうとする彼が可愛くて、思わず吹き出した。


「なんで好きなんですか?」


そんなこと言ったかな…


「じゃあ、暑いから切ってもいいですか?」


それは、ダメだな。


もぅ、とマルグレーテは頬を膨らませた。


そうは言っても、どうしようもないだろう。
好きなものは好きなんだから。


聞こえるかわからないほどの小さな小さなその告白は、しっかりマルグレーテの耳に届き、今度はマルグレーテの顔が赤くなった。


「あなたが好きなら仕方ないですからね。暑いですけど、切らないでおきます♪」


どうやら、満足のいく答えが出たらしく、そう言ってマルグレーテは立ち上がり、軽やかな足取りで寝室へ向かっていった。


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その時の誓いを守り、10年たった今でもマルグレーテの髪は長いままだった。鏡の中の彼女の髪はすっかり白くなってしまったけれど、ジョナサンの愛した長い髪の美しさは少しも損なわれることなく、今日という日を迎えていた。


今では、何故あの人が長い髪がいいと言ったのかはもう分からない。
何も言わないまま、あの人は息を引き取ってしまった。




……でも、大丈夫。
普段から気持ちを口にしないあの人が、娘に私の好きなところを話してくれたという事実だけで、私は幸せに生きていける。


「ジョナサンさん。…ありがとう」


今日も彼女の髪を、ひとすじの風が駆け抜けた―


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